介護職員の観察力について考えてみました

本日は介護職員が普段関わっている方々の何を観察することが必要なのか考えていきます。
 
体調管理に目的を絞りますので前提として膨大な医療知識が必要になってくるのですが、完璧を求めすぎて結局手が出せないとなると、本末転倒です。
 
そこで本日は
 
1 どの程度の知識が必要なのか
 
2 具体的にどういう部位を見てどう判断するのか
 
という点に絞って考えていきたいと思います。
 
深く知っているならばそれに越したことはありませんが、最低限の知識というよりは
介護現場に身を置く人たちがこれくらいの知識量と観察眼があると良い」という及第点のラインです。
 
 まずはバイタルサインの正常値です。体温であれば37.0℃を超えたら異常があるかもしれないと考えるのと同様で他の項目もこの数値を外れたら要注意と見る基準が「ある程度」あります。
 
ある程度としたのは個人差があることが大きいです。
 
血圧(単位はmmhg)であれば収縮期血圧が(血圧の上が~という呼び方をしてると思います)140以上であれば血圧が高いとされています。
拡張期血圧で90以上で同じく血圧が高く、どちらか片方でも該当した場合は注意が必要です。
 
個人差がありますので、普段から血圧が高い方であれば上が160くらいあっても平気な方もいらっしゃいます。
 
注意が必要と記載しましたが、何に注意が必要なのでしょうか?
 
高齢者の特性として血管が硬くなっています。体の代謝が衰えていたり、持病をお持ちの方も増えます。血圧があがるとそれだけで血管が切れたり、血管内にある血栓が脳に飛んだり心臓に飛んだりもします。長年使っているホースがあったとして普段は蛇口を一回転する程度の水しか出していなかったものを急に蛇口を全開にしたイメージですね。
 
血圧を見るときは普段の血圧と比較してください。普段より血圧が高い時は顔が赤くなっていることもあります。
 
突然のふらつきやしびれ、ろれつが回らない症状が出た場合は脳梗塞の可能性があります。
 
余談ですが血圧が突然降下した場合は脳梗塞よりも心臓や血管に障害が出たと考えるほうが良いです。脳梗塞の場合突然血圧が大幅に低下することは稀なためです。
 
覚醒状態(意識)の確認はジャパンコーマスケール(JCS)を使用しておくと良いです。全項目覚えられませんという方は意識レベルの桁数の判別ができるだけでも大分違います。常時覚醒していたら一桁、こちらから呼びかけしないと寝てしまうような状態であれば二桁、痛みを伴う刺激をしないと反応が無いような状態であれば三桁と判別できるだけで引継ぎがスムーズになります。

呼吸は固有名詞のついた呼吸波形がありますが、そこまで覚えなくても大丈夫です。
ポイントは呼吸の深さ(下顎や肩も動いているか見てください)と速度です。
 
脈拍の確認は速度を確認してください。
高齢の方は不整脈をもっている方が多いため、不規則に感じることもあると思いますが落ち着いて数えてください。
 
余談ですが、脈をとる指は自分の手の指で一番敏感な指をお勧めします。
慣れると脈をとってる指の感覚だけで大雑把な血圧がわかるようになります。
 
サチュレーション(SpO2)は血中の酸素濃度を測定したものです。通常95~100%の方が多いですがCOPDなど呼吸器疾患をお持ちの方は90%前後の方もいらっしゃいます。受診や搬送する時に役に立ちますので、パルスオキシメーターがある場合は測定を忘れずにしましょう。
 
バイタルに関してはこの程度の知識があるだけで対応が変わります。
 

続きまして体位管理です。
 普段皆様が利用者様の体位交換を行う時によく目にする体位で仰臥位や側臥位は通じますが、ショック体位ファーラー位があります。
ショック体位は形を知っておいて医療従事者からの指示がある場合に行うのが良いでしょう。ファーラー位やセミファーラー位と呼ばれる体位は、楽な姿勢を作ることを目的としています。(本来はドレナージを促進させるためです)
ファーラー位は上半身を45度ほどあげて膝関節が軽く屈折する半座位の姿勢です。
実際に介護現場で使うことが多いのはセミファーラー(20度~30度)で仰臥位、側臥位にする体位でしょうか。
 
誤嚥の防止にもなりますので、食後にギャッチを上げておくことがあるとおもいます。
体位交換用の枕やタオルなどを利用して体位保持すると良いです。
 
注意事項としては、長時間ファーラー位になっていると仙骨部に負担がかかります。
褥瘡リスクの高い方には注意してください。
ギャッチの角度と仙骨部の負担について詳しく知りたい方は第27回東京医科大学病院看護研究集録に「体圧分散マットレスの種類による仙骨部体圧の比較」という論文内でギャッチアップ角度による測定を行った研究がありますので是非一度目を通してみてください。
 
 排泄物の観察も重要です。尿の色が紅茶のような色の場合は潜血を疑いますし、単純に尿が濃い場合や匂いがキツイ場合は脱水症状を疑います。(体質もあります)
便も色や形状で察知できることがあります。
 
通常時と比べて異常がある場合、形状や色などを記録に残し診察時や医療従事者への申し送りを行う時に伝えることができれば良いです。
 
 
 表皮の観察も行います。皮膚が乾燥していると痒みが出ることがありますし、湿っている状態が続いていると褥瘡が出来やすかったり傷がつきやすいです。
入浴介助や排泄介助で体を見る機会が多い介護職員がいちばん気づきやすいので、異常はできるだけ見過ごさないようにしたいですよね。

この位の知識をもって観察できれば異常に速やかに気付くことができるのではないでしょうか?
 

観察ポイントのまとめ
 
・バイタルサイン
 
・排泄物
 
・表皮
 
本日は体調管理に限定しての状態観察について記載させていただきました。
 
他にも知っていたほうが良いことや知らなくてはいけないことはたくさんありますが、今わたくしが現場で仕事をしていて同僚の職員さんがこの位の知識や観察力があると安心して働けると思うポイントをまとめさせていただきました。
誤解が無いようにお話しますが、今の職場の職員で同じ部署の人はほぼ全員上記程度の知識は持っています
 
 

いかがでしたか?
 
なにかを覚えたり調べるきっかけになれば嬉しく思います。
 
carestepzeroより皆様へ